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とりあえず落ち着き場所を見つけた結城洋介と八島耕太は、
各々に支給されたディパックの中身を確認していた。
出発前に説明された通り、食料(粗末な包装がしてあるパンが二つ)、
水(2リットル入りのペットボトルが二つ)、
会場地図、コンパス(小学校の理科で使うような、非常に簡易なもの。
多分100円均一でも売っている)、懐中電灯(これも100円均一で売っていそうだ)、
これらがお互いのディパックの中に収められていた。
そして形状、大きさ、重さの違うものが各々に一つずつ。
洋介の”それ”は縦長のビニールで包装されていて、約30×10の大きさ、
そして指で摘まめる程度の重さ。何度もディパックの中をかき回し、
ひっくり返して唯一、耕太と違うのがこれだけだ。つまり、これが支給された武器になる。
支給武器の封を開け、中身を取り出す。出て来たものは細長い布が一枚。
薄暗い中でもその色が赤だと確認できる。
そして懐中電灯で照らせば『合格!』と白で書かれているのが確認できた
。この『合格鉢巻』が、俺の武器らしい……。
高校受験が出来ない可能性があるというこの状況で、最大最強の皮肉だ。
隣で耕太も自分の武器を確認していた。収められていた箱から取り出し、
月明かりに照らす。それは黒光りを放っている。
銃器だった。説明書を読むとその銃はブローニングと言う名前で、
装弾数は13発の9ミリパラベラム弾を使用するとも書かれている。
正直、そんな事はどうでもよかった。これで俺と耕太のチームは銃器があり、
咄嗟の戦闘になってしまってもただ殺されるのを待つだけではなくなった。
それに、こんな言い方はしたくないが、戦闘を行おうとしているクラスメイトを止める為に、
脅すことも出来る。それがいい使い方なのかと言われたら、良いわけがないだろう。
今は、この銃の引き金を引かなくて済む方法を考えるのが先決だ。
「なぁ、洋介」
銃を手にしながら、耕太が言った。
「これからどうしようか? このままじっとしていても何かが出来る訳じゃないし、
誰か仲間を探す必要もあるだろ」
ああ、そうだな。だけど、どうする?
「少し危険だけれど、少し歩こうぜ。それでみんなを探そうと思う。洋介もそれでいいか?」
もちろん異論は無い。俺はクラスメイト達を信じたいし、今は何も思いつかなくても、
みんなで集り、知恵を出し合えばきっとこの状況から脱出できる方法もあるはずだろうし。
そうして俺たちは修学旅行の為に持ってきた自分達のバックに支給された食料等を詰め込み、
移動を始めた。
――残り36人。
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