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「秀太が俺に勝てるわけないだろ。馬鹿が」

 運動能力だけならば優勝候補として上がっていた片岡秀太を川へ突き飛ばしたのは、 その重々しいからだを歩いているのより遅い速度で自宅へ向かっていた 美馬武(男子18番)であった。なぜこのような場所にいるのかと言うと、 自宅へ向かう途中、たまたまここを通ったからである。 旧五料橋へと目を向けたら、座り込んでいる人影を見つけ、 俺の初陣にしてやろうと襲ったのだ。 その方法はいたってシンプル。 策が低い場所だったので自身の重量を生かし (だが、彼はこう言うだろう。「俺のパワーを生かした」)体当たり。 立ち上がる直前の不安定なタイミング、そして100kg以上の体重だからこその攻撃法だ。 卑怯極まりないと言ってしまえばそれまでだが、今はプログラムの最中。 殺害方法に反則は無い。

 川に流され遠ざかってく片岡秀太が水底へ沈んだのを確認すると、彼はつぶやいた。

「優勝者である俺に殺されたこと、誇りに思いな」

 そして高笑いをする美馬武。当然だ。武器を使わずに一人殺めたのだから。
 高笑いする事数分。 思い出したかのように片岡秀太に支給されたディパックの中身を確認する。 食料や水などは同じものが入っている。先生が言っていた、 『武器以外のものは公平に支給される』と言うのは間違いではないらしい。 そして片岡秀太に支給されたディパックの中に、 美馬武に支給されたものと唯一違うものがあった。 プラスチックケースだ。もちろんそれの中身をすぐさま確認する美馬武。 プラスチックケースを開くと、スポンジの形にはめられた、 250ml缶ほどのものが二つ。そしてケース蓋の裏に挟まっていた紙切れ。 目を凝らしそれを読んでみると、そこには手榴弾と言う文字が確かに書いてあった。

 なるほど、これが片岡秀太に支給された武器らしい。
 そしてまた高らかに声を上げる美馬武。

 幸運だ! 俺のようなパワータイプ(他人からみたら、脂肪タイプ)に手榴弾とはな!  これでまた俺様の殺傷力があがったのだ! 鬼に金棒。敵なしだ! かかってこい、 3年2組の雑魚共め。このプログラム優勝者、美馬武が死を差し上げようではないか!  命乞いなど認めない。
 ハハハハハハハハ!! まずは空也、紺野空也。キサマを殺すとしよう。 この俺様を侮辱した罪は非常に大きいのだ。許さない、泣き叫んでも許してやるもんか!!


――残り36人。





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