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俺や耕太の動揺など気にしないように、担任、尾田先生は何食わぬ顔で
ファイルに目を通していた。ぱらり、とページ捲りの音がこの教室を支配していた。
先生に話しかけるべきか? それとも、みんなを起こすべきか?
いやいや、やっぱりただ、何かが起こるまで待ち続けるべきなのか……?
そして先ほど尾田先生が開けた引き戸から迷彩服の男が三人入ってきた。
頭には桃の模様が入っている鉄帽を被り、右肩には小銃、腰に拳銃を装備している。
この国の専守防衛軍だ。
その後ろから、沢山のデイパックを載せた台車を運ぶ防衛軍兵士が前後に二人。
あれは何なのだろうか。その台車の滑車の音で、入り口に近い側の生徒が数人頭を上げた。
頭を上げただけで、まだ寝ぼけ眼なのだと思う。それだけだ。
「先生、お時間です」
台車を運んできた二人の兵士が退室して、最初に入ってきた三人の、
尾田先生に近い兵士が発言した。その声で尾田先生はファイルを閉じた。
そして両手を叩き、言った。
「皆さん、起きて下さい!」
その声でクラスの半数が頭をあげ、声のした方を向く。それでもまで寝ているやつもいる。
「いい加減に起きろッ!!」
めったに聞かない尾田先生の怒鳴り声で、クラスの全員が尾田先生に注目する。
「おはよう、お前ら」
俺は呆気に取られて、ただただ先生に注目するしかなかった。
「えーとだな、きっと皆さんはこの状況を把握できていないと思います。
だから単刀直入に説明するから、聞き漏らさないようにな」
一呼吸置いて、続けた。「これから皆さんに、殺し合いをしてもらいます」
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